2007年7月27日金曜日

アンリの日記


★アンリの日記、その1

現在、セイント・アンドリュースの地にてプレシーズンのスコットランド遠征真っ最中の新加入選手、ティエリ・アンリ。今後、数回に渡ってアンリの日記を紹介していく。日記には、FCバルセロナの選手としての今の気持ち、スコットランドの歓迎ぶりへの感謝の気持ちなどが書き記されている。

セイント・アンドリュースの僕等に対する歓迎ぶりは素晴らしかった。イギリス人は常に大変紳士的だけれど、ホスピタリティーもあって、とても温かい気持ちにさせてくれる。今回も正にそういう歓待ぶりだった。僕達がこの地に到着してから、常に周囲の人達には親切にしてもらっている。本当に信じられないぐらい良くしてくれているし、トレーニング施設も非常に充実している。

時々、イングランドとスコットランドを同じとして見ると快く思わない人がいるかもしれないけど、とにかくホスピタリティーはスコットランドの人もイングランドの人も同じように素晴らしいと思う。僕自身、過去に2度、親善試合を戦うためにグラスゴーに来たことがある。

僕はフットボーラーとして着実にビッククラブへの階段を上ってきた。そして遂にFCバルセロナの一員になることが出来た。このチームで早速気に入ったのは、選手やコーチ陣の間の雰囲気がとても良いことだね。

新しい選手が入って来たら、その選手に気がいってしまいがちだけど、ここではあまりそういう新人に対する違和感なども無く、皆が皆と話をしている。選手達もコーチ陣もね。そして、いざ練習となるとサッと切り替えて、皆トレーニングに集中している。けれど、またホテル等でリラックスしている時は、皆で冗談を言い合って楽しい時間を過ごしている。このチームはとても良い雰囲気だと感じたね。

実を言うと今日の紅白戦は、自分としては結構苦労したよ。疲れたとかそういうことではなくって、何せ今年の3月初旬以降全く試合をしていなかっただけに、5ヶ月振りの実戦形式に少しギャップを感じた自分がいたんだ。一刻も早く試合感覚を取り戻したいね。でも、今日はその一歩として、とても良かったと思う。簡単ではないけれど、トレーニングを積んで、自分なりにしっかりと準備して、監督が起用してくれるように努力していくだけだ。でもとにかく、今日は久々に実戦形式のゲームが出来て良かったと思っている。

練習以外の時間はおやつを食べた後に少し眠るのが僕の習慣なんだ。午後のシエスタの時間にはテレビをつけてそれをなんとなく見ながらうとうとするのが日課だね。今は読書はしないね。だって読み始めると直ぐに寝ちゃうからね。シーズンがスタートして、体もすっかり出来上がったら読書やインターネットをする時間が増えると思う。今はハードなトレーニング以外の時間は極力体を休めようと思っている。

それじゃぁ、また明日。

ティエリ・アンリ


★アンリの日記、その2

昨日からスタートした“アンリの日記”。二日目となる今日は、自身の好物、パン・コン・トマテ(パンににんにくとトマトを擦り込んでオリーブオイルと塩で味付けをしたカタルーニャの定番メニュー)との出会い、そしてバルサでのデビューへの思いなどを綴った。


ここ数日は厳しいトレーニングを連日続けているから、エネルギーを補給する為にしっかりと食べなければいけない。自分は自身の体が必要としているもの、欲しているものを努めて食べるようにしている。もちろん、偏らないようにしてね。色んな物をちょっとずつ食べるように心掛けている。だけど特にフルーツは沢山食べるかな。何故ならそれが体にとって重要だと思っているからだ。とにかく色んなものを少しずつ食べる。パスタ、米、鶏肉、サラダ、何でも食べるね。

ホテルに滞在する時は、色んな種類の食事をすることが自分は好きだ。毎日同じ物ばかり食べていたら飽きてしまうからね。だけど残念ながらここ(スコットランド)ではバルセロナで良く食べていた僕の好物が無いんだ。そう!パン・コン・トマテだよ。パンにニンニクとトマトを擦り付けて、オリーブオイルと塩で味付けしたらもう食べられるあれさ。自分はその上に生ハムを乗せて食べるのが大好きだ。あれ、本当に美味しいよね。また、パタタス・ブラバス(揚げたじゃがいもに独特のソースを付けて食べるカタルーニャの定番料理)も大好きだね。本当に信じられないくらい美味しいよ。

今日は雨の音で目を覚ましたんだ。ここまで二日間天気が良かったけど、今日の方がスコットランドらしい天気と言えるかもしれないね。でも、トレーニングする分にはこれくらい涼しい方が良いね。だって、ここ数日はずっと走るメニューが多いからね。トレーニングは連日厳しい内容が続いている。プレシーズンで身体を作っていく段階だから当然のことだけどね。毎回練習は気合十分の、活気ある中で行われている。激しいトレーニングを乗り越えて、開幕を迎えなければいけない。早く体のリズムを慣れさせたいね。一日一日と体力が付いてきているし、体が厳しいトレーニングに適応してきているのを感じている。先シーズンの後半はずっとプレーしない時期が長く続いたけど、今シーズンの開幕に合わせて、他の皆と同じように体を作っていくつもりでいる。

明日の木曜日にはバルサの選手として初の試合をプレーすることになるだろう。監督が決めることだからまだ分からないけどね。とにかく自分にとっては感慨深い瞬間となるだろう。公式戦ではないけど、バルサのユニフォームを着ての初めての試合となるわけだからね。

緊張は無いね。僕はもうすぐ30歳になる年齢だ。これぐらいのことじゃびびらないよ。でも感激はするかもね。

既にこの間の紅白戦でロナウジーニョとエトーと一緒にプレーすることが出来た。こんな素晴らしい選手達が沢山いるチームでプレーすることなんてそうあることじゃない。本当に感激だし、ラッキーだと思う。ロニーやサムエルと一緒にプレー出来るということは本当に素晴らしいことだ。でも、彼らだけじゃない。他の選手達も本当に素晴らしい選手達ばかりだ。ロッカールームだろうが食堂だろうが、何処へ行っても各国代表の選手達ばかりだ。まったく凄いことだよ。

それじゃあ、また明日!

ティエリ・アンリ


★アンリの日記、その3

第三日目となったティエリ・アンリの日記では、ロッカールームでのコミュニケーションについてや、現在勉強中のカタランやカスティジャーノ(スペイン語)、そして間もなく迫ったデビューを前にした心境などについて書き綴ってくれた。

今、チームメイトとコミュニケーションをとるのはとても簡単だよ。ロニーもサムエルもフランス語を話せるし、トゥーレ・ヤヤもそうだ。もちろん、テュラムやエリック(アビダル)もね。今、カスティジャーノ(スペイン語)を猛勉強中なんだけど、まだこれを使ってインタビューに応えることは出来ないし、フランス語のように微妙な“あや”まで伝えることはまだ出来ない。一刻も早く出来るようになりたいね。

重要なのは十分に理解することで、今のところライカールト監督が練習中に出す指示は理解出来ているよ。今僕はフランス語と英語、そして少しのイタリア語を話すんだけど、それらの言葉がカスティジャーノの理解にも役立つ時があるんだ。似ている点はあるからね。でも同時にごちゃ混ぜになってしまうこともあるんだ。カスティジャーノを喋ったつもりが、イタリア語が出てきちゃったりね。でもまだこのチームに入って1週間だ。徐々に覚えていこうと思っているよ。時間が経つにしたがって良くなっていくはず。

カタラン(カタルーニャ州特有のカタルーニャ語)に関しては、入団発表の時にセスクに教えてもらったフレーズを使ってみたんだ。フィジカルコーチや理学療法士、他のスタッフ達は皆カタランを使うよね。彼らがゆっくり話してくれた時は自分にも理解出来るよ。だけど速く話されるとまだまだ理解するのは難しいね。でも今カタランも同時進行で勉強しているよ。まあ、そのお陰で時々混乱するけどね。例えば自分は良く午前中に“ボンディア(おはよう)”を使うんだ。他にもカタランだと“モル・ベー(いいねぇ)”“モルテス・グラシエス(どうもありがとう)”“アデウ(さようなら)”とかね。重要なのはその土地の文化を良く知ることだと思っているよ。

また、このセイント・アンドリュースの地ではカンテラ(下部組織)の若い選手達とも一緒にプレーしている。まだ彼らとは十分に話をする機会を持てていない。何故なら自分のカスティジャーノの能力の問題でね。だけど、アーセナルのフラン・メリダと共にU16のスペイン代表としてプレーしていたボージャンは見たことがあるし、ジオバンニ・ドス・サントスはU17ワールドカップで見たことがある。彼らも既に偉大なフットボーラー達だ。実際、ここにいる若い選手達は素晴らしい選手だからここにいるんだ。彼らには希望を持って突き進んで欲しいと言いたいね。彼らは才能を持っているし、あとはメンタリティー次第だと思う。

今夜はいよいよ僕のデビュー戦となるダンディー・ユナイテッド戦だ。もう準備は出来ているよ。常に出来ているけどね。でも重要なことは、この5ヶ月間試合をしていないから、自分が何処まで今出来るのかを把握することだね。今は無理したくないからね。そこから少しずつ積み重ねていけば良いと思っている。早くフットボールがしたいけど、着実に進んでいくことも重要だからね。次の日記では、試合での感想を書くことになると思う。

それじゃあ、また明日!

ティエリ・アンリ

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